【詳報】芝野挑戦者がシリーズ初勝利 一力名人に中押し勝ち
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日文原文内容
【詳報】芝野挑戦者がシリーズ初勝利 一力名人に中押し勝ち 一力遼名人(29)が挑戦者の芝野虎丸棋聖(26)に2連勝して迎えた第51期囲碁名人戦七番勝負第3局(朝日新聞社主催)は9日午前9時に再開される。名人が3連覇に一気に王手をかけるか、挑戦者が1勝を返して反撃ののろしを上げるか。対局の模様をタイムラインで詳報する。 舞台は、愛知県蒲郡市の旅館「旬景浪漫 銀波荘」。立会人は羽根直樹九段(50)、新聞解説は大竹優七段(24)、ネット解説は下島陽平八段(47)。 持ち時間は各8時間。1日目の消費時間は、黒番の一力名人が3時間41分、白番の芝野挑戦者が3時間49分。 第3局総括 両者の読みがぶつかり合う熱局 序盤早々から石がきしみあう白兵戦が続き、両対局者の深い読みがぶつかり合う熱局だった。 名人の封じ手、黒109は検討陣予想外の一手。挑戦者が白110から右上の黒の大石を脅かしにいったとき、黒113以下119で安普請ながら大石を補強。先手を取って特大の右下黒121に回る構想だった。 白が先着していた右下隅が黒地となり、陣取り合戦で名人が先行。挑戦者は黒にパンチを入れなければならない。中央白122が読みの入った強手だった。黒に囲まれ、死んだふりをしていた要石を担ぎだし、各所の黒の一団を浮足立たせた。 結局、黒143まで白は下辺の黒の塊を取り込み、黒はその右側の白石4個を取る大フリカワリに。この折衝で挑戦者がわずかに抜けだし、その後の名人の勝負手もしのいで勝ちきった。持ち時間各8時間のうち、残り時間は名人15分、挑戦者16分。 解説の大竹優七段は「1日目に名人の妙手で後れをとった挑戦者でしたが、2日目の白122が深い読みに根づいたすばらしい勝着でした」と分析した。 18:50 熱戦振り返り 勝利した芝野挑戦者が局後の検討を終え、「囲碁将棋TV」に出演。解説の下島八段と本局を振り返った。 対局後インタビュー 芝野虎丸挑戦者の話 形勢には自信がなかったが、2日目のフリカワリで少し良くなった。とりあえず一つ勝てて良かった。まだ続くのでしっかり準備して頑張りたい。 一力遼名人の話 封じ手のあたりはあまり自信がなかった。途中までは自分らしく打てたと思うが、最後に一気にダメにしてしまった。中盤の精度をもう少し上げたい。 18:04 名人が投了 挑戦者の184手目をみて、名人が投了を告げた。挑戦者が白番中押し勝ちで、今シリーズ初勝利を挙げた。 17:55 勝負手不発か 検討室のモニターを見つめながら、立会人の羽根九段が「なんか変ですね」。名人の勝負手は不発に終わったとみられている。 囲碁将棋TVで解説中の下島八段、大竹七段も「一力さん、間違えましたか?」「急転直下でしたね」。一気に終局近しの雰囲気が漂ってきた。 17:31 記録係はふたり態勢、迫る秒読み 対局者の持ち時間が少なくなり、記録係がふたりとも対局室に入った。これまで西岡正織五段と櫻本絢子初段が1時間交代で務めていた。 秒読みが迫り、戦いは最終盤に入った。 17:25 名人の勝負手 非勢の名人が渾身(こんしん)の勝負手を繰り出した。黒1がそのプロローグ。挑戦者が最強の白2で受けると、黒3と白の陣中で暴れ出した。 「なんだ、これは」。検討室は騒然とする。上辺に根づいているとみられた白の塊を浮足立たせ、あわよくば全滅を狙っている。 AIの評価値は依然として挑戦者の勝率98%を示しているが、闇試合となると結果はどちらに振れるかわからない。 挑戦者、今シリーズ初勝利に向けて難所を越えられるか? 17:20 「いちばん難しい場面」 「難しすぎて、無理」。ユーチューブ解説を再開した下島八段と大竹七段が口をそろえた。 形勢は依然として、白番の芝野挑戦者が有利。どのAIも5、6目のリードを示している。ただ、下島八段は「人間では判断がつかない。この対局でいちばん難しい場面になっている」と話した。 15:55 大詰めか 「囲碁将棋TV」での解説で下島八段は「大詰めを迎えつつある」。局面自体は、地合い勝負では白番の芝野挑戦者が「優勢」で検討陣は一致しているという。 ただし、立会人の羽根九段は「まだ、難しい場所が残っている」。予断を許さない状況のようだ。 15:00 タルトとケーキ 午後3時、両対局者におやつが出された。対局場がある蒲郡市内の洋菓子店「ガトウ福寿軒」のメニューから、両者が1品ずつ選んだ。 一力名人のオーダーは「酒井さん家のいちじくタルト」。蒲郡でとれたイチジクがたっぷりのった一品だ。飲み物はアイスコーヒーを頼んだ。 芝野挑戦者は、とろりとした口当たりが特徴の「チーズケーキ」。飲み物はお気に入りの「蒲郡みかんジュース」で、1日目の昼食から4回連続の注文となった。 14:20 羽根立会人が展開予想 ユーチューブチャンネル「囲碁将棋TV」のライブ解説に、立会人の羽根九段が登場した。 150手目の時点でAI評価値は「一力名人2.2%、芝野挑戦者97.8%」と、大差で挑戦者優勢となっている。 だが、羽根九段は「ちょっとでも手堅く打つと、すぐに1目損することはよくあると思います。(芝野挑戦者が)『迷ったときに手堅く』という手を5回やれば、たぶん良い勝負になりますよね」と述べ、形勢は大きく変わりうると指摘した。 「(芝野挑戦者の)『迷って手堅い』という選択を、一力さんが今後、何回引き出せるかですね」と、一力名人が追いつく目もあると分析した。 14:10 挑戦者、大長考 1時間の昼食休憩が明けて、午後1時から対局再開。午前中に53分考え、手を下さず休憩に入った挑戦者は、再開後も手が動かない。白1に打たれたのは午後1時56分、1時間49分の大長考だった。休憩時間の1時間もきっと考えていただろうから、正味2時間49分の超大長考だ。 白1は検討陣の本命手。第一感で浮かぶ手をすぐさま打たず、長考した中身はわからない。名人の黒2はほとんどノータイム。白5に黒6を選び、黒12まで白は左側の黒の塊をごっそり取り、代わりに黒は右方の白石4個を取る、派手な大フリカワリとなった。 AIの勝率は挑戦者の98%超。2日目の封じ手直後から名人が仕掛けて大変化が生じた。名人は思惑どおりだったのか、誤算があったのか。 これからヨセ勝負に入る。解説の大竹七段によると、現状は「盤面で黒が勝てるかどうか」。後手の白にはあらかじめ「コミ」と呼ばれる6目半のハンディが与えられている。陣地が黒白同じなら白の6目半勝ちとなる。名人はこれからヨセで7目以上の得をして、陣取り合戦で差をつけなければならない。 13:00 対局再開 1時間の昼食休憩が終わり、対局が再開した。休憩前に53分考えた手番の芝野挑戦者はすぐに打たず、132手目を考えている。 12:00 大変化 名人の思わぬシノギ勝負から、盤上は突如として騒然となった。しかし挑戦者が死んだふりをしていた要石を△と担ぎだすと、名人の手がパタリと止まった。 「誤算があったのではないか」と検討陣。△の強手は、前日の封じ手の時点でも織り込み済みのはずで、ここで時間を使うのはリズムがおかしいというのだ。 長考することジャスト1時間。名人は黒1から決める。白2と逃げてこの白は捕まらない。捕まらなければ四囲の黒石はバラバラになる。それをどう収拾するか。 黒1からバタバタと手が進み、挑戦者の白8に一転、名人は黒9へ。これは何だ。 検討陣の見立てでは、白Aと換わってから黒B以下黒Hまで。白の種石は右方の白とつながり、黒もHと切って△から千切られた一団は生還する。 目を見張る大変化。黒は陣地を稼ぎまくっているが、その反動で各所の石構えが安普請だ。そこを挑戦者がいかに突いてポイントを稼ぐかが勝負になる。 黒9に続いて白Aの一手と思われたが、挑戦者は手を下さない。正午の昼食休憩まで考えること53分。挑戦者はそのまま手を下さず休憩に入った。 挑戦者の昼食は天ざるそば。食しながらも、脳内に描く盤上の進行に忙しいに違いない。 正午現在の消費時間は、名人4時間51分、挑戦者5時間34分。第1局と第2局は、2日目午前の時点で形勢は大きく名人に傾いていたが、本局が示すAIの形勢は挑戦者の勝率96.2%。しかし解説の大竹優七段によると「人間的には、これから挑戦者が勝ちきるのはまだまだ大変。優勢といっても全然安心はできません」という。 12:00 うな丼と天ざるそば 一力名人が昼食に選んだのは、愛知県西尾市一色町の名産であるうなぎを使った「うな丼(お吸い物付き)」。西尾市は対局場がある蒲郡市の西隣に位置し、一色町はうなぎ養殖が盛んなことで知られる。飲み物にはウーロン茶を頼んだ。 芝野挑戦者の注文は、「天ざるそば」と「蒲郡みかんジュース」。みかんジュースは蒲郡市特産のみかんを使用しており、芝野挑戦者がオーダーするのは1日目の昼食、午後のおやつに続いて3度目だ。 12:00 53分考えて昼食休憩 芝野挑戦者が53分考えたまま、正午になって昼食休憩に入った。 ユーチューブ解説の下島八段は「クライマックスを迎えています。ここからの数手は重い」。大竹七段は、午後からの対局について「刮目(かつもく)して見よ」。 大山康晴監修の「聖地」 対局会場の旅館「銀波荘」は、将棋のタイトル戦の舞台としてよく知られる。 1966年以降、将棋タイトル戦の開催は93局に及ぶ。館内には、対局の歴史を伝える「THE・将棋ロード」という一角があり、棋士の揮毫(きごう)や封じ手のほか、対局前日に釣りを楽しむ大山康晴十五世名人と加藤一二三名誉十段の写真パネルも飾られている。 囲碁のタイトル戦でもおなじみだ。最近では、今年6月に本因坊戦が打たれ、当時、本因坊でもあった一力名人が対局している。 タイトル戦で対局に使われるのは「壺中庵(こちゅうあん)貴賓室」。大山十五世名人が監修して、対局に適した部屋としてつくられたという。三河湾を望み、露天風呂からは星空が眺められる、格調高い客室だ。 9:45 AIの性格の違いは 対局が再開され、芝野挑戦者のAI評価値がグッと上がった。参照している複数のAIで数値がけっこう異なるという話題になり、会場を訪れていたAI研究者の伊藤毅志・電気通信大学教授に急きょ、ユーチューブ中継に出演してもらった。 AIによって好戦的だったり、穏やかだったり、性格が違うように感じる、という大竹七段の感想に、伊藤教授はうなずく。探索を優先するのか、幅広く読むのを優先するのか、といったAIのタイプによるという。大竹七段は「序盤の難解定石の研究をしたいのか、戦いに強くなりたいか、で適したAIは違いますね」と話す。 評価値の違いについては、伊藤教授は「優先するのが、地なのか、勝ち負けなのか、で変わるのでしょう」と言う。 じつは、かつてのAIはシチョウが読めなかった、と大竹七段は振り返る。「AIは、複数の選択肢があるのは得意なのですが、シチョウは一直線なので苦手だったんです」と伊藤教授は解説した。 9:40 名人、決断の一手 名人の封じ手▲に対し、挑戦者は白1から右上の黒の大石を攻める。これに対する名人の応手も検討陣を驚かせた。 白3に黒4のアテが決断の一手。白5以下11まで一本道で安普請ながら黒の大石を強化し、主眼の右下黒12に回り、右下隅を完全な黒地にした。 このままヨセ勝負になれば、黒の右下の大地がものをいう。挑戦者は黒の安普請を突いて、パンチを入れたい。 本命は白A。取られていたはずの要石を担ぎだし、これが捕まらなければ各所の黒石はバラバラになる。もっとも、名人は対策を立てているはずだ。 2日目の封じ手からバタバタと手が進んだが、ここで挑戦者の手がピタリと止まった。嵐の前の静けさのようだ。 9:20 名人の評価値が急落 ユーチューブチャンネル「囲碁将棋TV」では、下島八段が「芝野挑戦者推し」、大竹七段が「一力名人推し」の立場から解説をスタートした。その最中に「事件」は起きた。 黒番の一力名人が、黒113とアタリをした途端、名人のAI評価値が39.6%から16.5%に急落したのだ。 その瞬間、大竹七段は「うわ、いまアテた?」と驚きの声を上げた。「このアテは本当に意外ですよね」という大竹七段に、下島八段が「(白に)逃げられたらどうするんですか?」と尋ねると、大竹七段は「僕にはわからないです」と答えた。 その後、両解説者は115手目時点での「人間評価値」(10点満点)をフリップに記入した。 名人を「4」とした大竹七段は「おそらく一力さんはすでにちょっと(形勢が)悪いと思っている気がします。だけど、表情とかしぐさを見ると『別に全然これでいけるよ』と言っているように見えるので40%」と述べ、封じ手以降の展開はあくまで名人の想定通りだと分析した。 一方、挑戦者を「9.3」と評価した下島八段が「これはもう、見たまんま」と自信満々に話すと、大竹七段は「それはずるくないですか?(笑)」とツッコミを入れた。 9:05 封じ手に検討陣「えーっ」 名人が前日に25分を投じた封じ手は右下隅の黒1。「えーっ」。検討室から仰天の声が上がった。まったくの予想外だった。 右上から中央に延びる黒の大石が心もとなく、予想は黒Aのほぼ一択だった。名人は隅を制して、右上の弱い石は力でしのぎ、陣取り合戦で優位を主張するもくろみとみられる。 とはいえ、黒の大石は見た目、非常に危なっかしい。AIの評価値は、封じ手前の黒の勝率51%から39%に急落した。ただし、手どころにはめっぽう強い名人のことだ。白Aからの攻めには対策を立てているはずだ。 陣地の広さを競う陣取り合戦では、黒が優位に立った。挑戦者は、名人があえて残した黒の弱点を突き、パンチを入れたい。 9:00 2日目の対局はじまる 2日目朝の空模様は曇りで、晴れ間ものぞく。激しい風雨に見舞われた1日目と比べると、対局室の窓から望む三河湾は穏やかだ。 ただ、対局場のある愛知県内には「線状降水帯半日前予測」が発表されており、9日夜のはじめ頃にかけて大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性がある。 午前9時になると、両対局者は封じ手の局面まで石を並べ直した。立会人の羽根九段が、一力名人が前日に封じていた109手目を開封した。 名人の封じ手は「16の十五」。2日目の対局が始まった。 1日目総括 名人、AI超えの妙手も形勢互角 開幕2連敗の挑戦者が序盤早々に名人を挑発した。左下黒3からの定石の途中で手を抜き、白8と左上隅に転じたのがそれ。名人は挑発に乗って左下から戦端を開いた。 名人の黒43がAI超えの妙手。この手が放たれた瞬間、AIの示す黒の勝率は41%から17%に急落したが、挑戦者の白44のあと67%にV字回復した。白44が悪手だったからではない。「AIは名人の狙いが見えていませんでした」と解説の大竹優七段。黒45まで白の要石を取っては、明らかな技ありだ。 しかし挑戦者は粘りを見せ、徐々にポイントを稼ぎ、ついには追いついた。封じ手の時間が近づくにつれて長考を重ねる名人の姿が、局面の難しさを物語っている。 形勢はまったくの五分。焦点をつかみがたい局面で、2日目は手探りの神経戦が続くとみられる。大竹七段は「獲得陣地の広さはいい勝負です。長くしんどいヨセ勝負になりそうです」と分析した。
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